日本たばこ産業(JT)の株価・業績を分析

今回は高配当株として個人投資家に人気の銘柄の日本たばこ産業(2914・JT)について分析します。

 

事業概要

日本たばこ産業の中核事業はグローバル展開している、販売数量世界3位のたばこ事業(たばこ製品の製造・販売)です。2021年度はたばこ事業の売上構成比は90.1%でした。残りは加工食品が6.3%、医薬3.5%、その他が0.1%となっています。

社名からは想像しにくいですが21年度の海外売上高比率は70%弱に上り、たばこ事業の本社機能も2022年からスイスに移しています。

 

たばこ産業の主なブランド

  • メビウス
  • ウィンストン
  • キャメル
  • LD
  • ホープ
  • セブンスター
  • プルーム(電子加熱式)

業績と株価

日本たばこ産業は10月31日に3Qの決算を発表しています。印象としてはポジティブで2022年の業績予想を上方修正しています。

上方修正の理由としては、為替の円安進行や値上げ効果などが挙げられています。値上げしても想定以上に需要が落ちていないことは、ポジティブサプライズだと思います。

また、業績予想の上方修正に伴い配当の予想も150円から188円に修正しています。

TradingView提供のチャート


3Qと修正後の業績予想が事前のアナリストコンセンサスも上回っていたため株式市場もポジティブな反応となりました。

決算前の取引最終日の終値は2464円でしたが、決算発表翌日は買い気配で始まり、寄付き後も上げ幅を大きく広げる展開となりました。

配当利回りを見ている投資家が多いとすると、増配発表前の利回り水準である6%前後のところで株価も一旦は落ち着く可能性が高いのかなと思います。

 

日本たばこ産業の株価の適正水準はどこか

日本たばこ産業は「多様な価値を提供するグローバル成長企業」を目指すとしています。

グローバル企業であることは確かですが、日本たばこ産業は成長企業と言えるでしょうか。この部分が日本たばこ産業の中長期的な投資判断をするうえで重要です。

日本たばこ産業が成長性のある銘柄かどうかの判断は、PloomX(加熱式たばこ)に勝算があるかどうかにかかる要素が大きいと思います。

 

PloomXは国内市場においてシェア拡大はしていますが、それでも22年3Q 時点で7.9%に留まっており、依然として国内ではフィリップモリスのアイコスが強い状態にあります。

紙巻きたばこから、加熱式へのシフトが進んでいるため、経営資源を集中投下してでもシェア拡大は中長期的には必須となっていると思います。

また、22年10月から英国でもPloomXが販売開始されますので、今後の動向には注目です。

グローバルなたばこセクターのPERは12倍程度です。PERが高くならない理由の一つとして、ESGの観点から機関投資家から敬遠されている事が大きいと考えられます。

例えば世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府年金基金は、2010年からたばこを生産する企業を投資対象から外すことを決めており、その際に株式の売却も完了しています。

既に売却が完了しているため、これから日本たばこ産業の株価にESG的な理由でネガティブな影響が出るとは考えにくいですが、機関投資家からのたばこ銘柄への見方が変わらない限りPERが切りあがっていくというのは難しいように思います。

ただ個人投資家としては、PERが切りあがらないことで高配当を享受できるという側面があるのも事実でしょう。

今後の注目点

日本たばこ産業は株価を見るうえで注目しておくべき主な点をまとめました。

  • 来期以降の配当の動向
  • ロシア事業の動向
  • 為替の動向
  • PloomXのシェアの動向

最大の注目点はロシア事業の取り扱いだと思います。ロシアでの事業を撤退する企業が多い中で日本たばこ産業は、ロシアでの事業を継続しています。

3Qの決算資料によると22年12月期の業績見込みの内、ロシア市場の割合は売上高約11%、調整後営業利益で約21%となっており、かなり業績貢献の大きい市場となっています。

仮に撤退する場合、業績影響は大きく出ると考えられるため配当を維持できない可能性が高いです。

減配が見えてきた場合、現在の株価を正当化するのは難しくなってくると思いますので、最大の懸念点といえるでしょう。

また、海外での収益貢献が大きいため、円高に振れた場合業績の下押し要因となります。

 

この記事は11月7日時点で公開されている情報を基に作成しています。

投資は慎重に自己責任でお願いします。