ソニーグループ22年度2Q決算解説

今回は11月1日に発表されたソニーグループの第2四半期の決算について分析、解説していきます。

 

全体の主なサマリー

2Qの決算で通期業績見込みを前回予想から売上を1000億円,営業利益を500億円を上方修正しました。

ゲーム事業や為替動向など不安な点もありますが、総合的には非常にポジティブな内容の決算でした。

 

ソニーグループは業種の分類では、電子機器に分類され景気敏感な会社というイメージが強いですが、今回の決算では多様な事業ポートフォリオを持つことによる景気悪化への耐性を確認できたように思います。

 

ゲーム(G&NS)は引き続き低調

G&NSの23年度2Qは営業利益が405億円で前年同期比49%減となりました。主な要因は、為替の悪影響や買収費用の計上、開発費の増加、サードパーティー・ソフトウェア(自社制作以外のソフト)の販売減少などがあります。

 

1Qの決算で営業利益の通期見通しを2,550億円に下方修正していますが、2Qの決算でも2,250億円に再度下方修正しました。主な要因は2Qまでの実績とサードパーティー・ソフトウェア(自社制作以外のソフト)の販売減少、為替の悪影響を更に織り込んだ事によるものです。

 

G&NSの為替の影響は、円安が進むと売上にはプラスですが、ドル建てコストの比率が高いことから利益にはマイナスに作用します。為替要因の下方修正については前回発表時よりも為替の前提レートを円安方向に修正していますので、サプライズ感はなかったと思います。

為替を除いた要因についてはネガティブな印象が大きいです。

1Qのソフトの販売本数は前年同期比26%減の約47千万本で2Qは18%減の約62千万本でした。またサブスクリプション型ビジネスのプレーステーションプラスの2Qの会員数は45.4千万人で前年同期比の47.2千万人を下回りました。低調な理由として外出機会の増加などが挙げられています。

ソニーグループの開示資料を基に作成

 

ゲーム事業は2Qまでは低調でしたが、3Q以降は回復の公算が大きいと思います。  3Q にはファーストパーティーのソフトであるゴッド・オブ・ウォーラグナロクが発売されました。決算説明会でもCFOが期待していると言っていましたが、Bloombergによると好スタートを切っているようです。

 

ソニーグループが9日発売したビデオゲーム「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」が好スタートを切った。レビューサイトでの評価も高く、同社の期待通り、ヒット作になる可能性がある。

出所:ソニーのゲーム「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」、好スタート - Bloomberg

サードパーティーでは、10月28日から人気シリーズ、Call of Dutyの最新作が発売されていることから、3Qの復調には期待が大きくなっていると思います。

音楽,映画のコンテンツは強い

今回の決算は音楽、映画事業の強さが目立つ決算だったように思います。

音楽事業は売上高877億円(前年同期比32%増)、営業利益は281億円(56%増)となりました。通期の見通しも売上を7%、営業利益を15%上方修正しています。

 

音楽事業は売上と営業利益の両方が円安がプラス影響となりますが、為替影響を除いても非常に強い数字となりました。CDを売るビジネスモデルからストリーミングで稼ぐモデルに上手く移行できたことにより、景気などにも左右されにくい事業に変化したと思います。

 

ソニーの音楽事業は今まで様々なM&Aや音楽カタログの取得など積極的な投資をしてきましたが、それらの成功を実感させる決算だったと思います。音楽出版に関しては、ソニーが所有,管理する曲数が引き続き増えており、これからも安定的な成長が見込まれます。

 

映画事業も通期の業績見込みを上方修正しています。映画もヒット作品が出るかによって業績は左右されますが、Crunchyrollなどのサブスクリプション型ビジネスもあり、映画セグメントの中でも多様な事業ポートフォリオが組まれています。

 

I&SSは過去最高の売上を記録

イメージセンサーなどのI&SSは為替の好影響も大きく売上は過去最高となりました。

 

イメージセンサーのローエンドのスマホ向けは回復しませんでしたが、iPhone向けとみられるハイエンドスマホの大判化・高性能化により堅調な業績となりました。

 

ハイエンドスマホのイメージセンサーの大判化トレンドは続くとみられていますし、車載向けに関しても中長期的な成長期待が大きいです。当面は景気や為替、iPhoneの生産状態など懸念点も多く、業績はぶれると思いますが、投資を継続して業界でのプレゼンスを維持することが重要かなと思います。

 

決算後の株価の反応

決算前のソニーグループの株価はナスダックの下落につられて、年初来の安値圏で推移していました。

決算の翌営業日の株価は買い戻しを誘って、10%程度高く寄付きましたがその後陰線を引く形で結局6%程度の上昇で取引終了しました。

TradingView提供のチャート

その後アメリカのインフレ鈍化を示唆する指標が出たことにより、相場の上昇もあり11月11日には11,630円で取引終了して、8月下旬の株価まで戻してきています。

今後は金利低下によるグロース株追い風が続く可能性があると思いますが、その場合為替は円高に振れると考えられるため業績の圧迫要因になる可能性があることは留意する必要があるでしょう。ソニーグループの想定為替レートはドル円で140円としています。

 

この記事は11月12日時点で公開されている情報を基に作成しています。

投資は慎重に自己責任でお願いします。