決算発表後、株価軟調の任天堂を分析

今回は株式分割によって個人投資家も株を買いやすくなった、任天堂について分析していきたいと思います。

 

2Q決算の内容

任天堂の23年3月期の中間決算は前年同期比0.2%増の営業利益2,203億円でした。Nintendo Switchハードの販売台数は部材不足の影響により、前年同期比19.2%減となりました。それでも増益で着地出来たのは為替の要因とソフトウェア販売が前年同期比1.6%と堅調だった事が大きいです。

 

2Q 決算時に通期の業績予想も上方修正しています。ただ営業利益を据え置いており、修正後の経常利益も市場予想を下回る水準となっています。また通期のNintendo Switchハードの販売台数予想も2100万台から1900万台に下方修正をしており、年末商戦に向けて不安が残る決算発表となりました。

 

決算発表後なぜ株価下落?

任天堂の株は決算発表後、売り気配で始まってその後も軟調に推移しています。

決算前にはスプラトゥーン3の好調が伝わっており、今回の決算は良い内容が出てくると期待され、事前に好決算が株価に織り込まれて迎えた決算でしたので、決算内容に失望した人も多かったように思います。

TradingView提供のチャート


特にNintendo Switchハードの販売台数予想の下方修正と通期の営業利益予想の据え置きはネガティブサプライズでした。また、市場にはスプラトゥーン3の貢献による通期のソフトウェア販売本数の上方修正期待もあったと思いますが、そちらも据え置きとなっています。

決算発表後の株価の下落の一因には為替が円高に振れていることもあると思います。決算発表時は140円台後半で推移していましたが、米国のCPI発表後急速に円高が進み、11月14日時点では140円前後で推移しています。任天堂の修正した業績予想の為替前提レート135円なので、会社の業績予想に対して更にネガティブになる水準ではありませんが、為替による業績サポートが無くなるのは痛手でしょう。

 

決算発表自体はネガティブな内容でしたし為替動向も心配ですが、引き続き上振れ余地は残されていると思います。人気タイトルのスプラトゥーン3はまだ海外を中心に販売を伸ばす余地がありますし、11月18日にはポケットモンスターシリーズの新作ゲームの発売を控えており、これらの好調が見えてきた場合株価が反転する可能性も高いと思います。

またNintendo Switchハードの販売台数予想の下方修正は部材不足が原因の供給サイドの問題であり、需要サイドの問題ではないという事も重要なポイントです。

任天堂の株は割安か割高か?

ゲームセクターのPERは概ね15~25倍の企業が多いです。任天堂の予想PERは11月14日時点で16.5倍となっておりPERだけみると割安と考えられます。しかし任天堂の株の評価をめぐってはアナリストの中でも評価が分かれる部分があるようです。

評価の分かれ目は以下のようなポジティブな要素とネガティブな要素のそれぞれを、どの様に株価に織り込むべきかによって生じていると思います。

ポジティブ,ポテンシャル

  • 安定したキャッシュフロー
  • 強いIP
  • デジタルソフトへの移行順調

ネガティブ,懸念点

  • 競争激化
  • Switchのピークアウト
  • パイプラインの持続性
  • 次世代機への移行失敗

任天堂の魅力は安定したキャッシュフローに加え、配当性向50%といった魅力的な株主還元があります。また絶大なブランド力を誇るIPやデジタルソフトへの移行も順調なことなどは株式市場で評価されるべきだと思います。

一方で任天堂の株は割高と指摘する人は、Switchのピークアウトを意識している人が多いです。この懸念点は次世代機の具体的なものが出てこなければ払拭されずに付きまとうように思います。

しかし個人的には23年発売のゼルダの伝説など期待できるソフトが続くことから、懸念が現実となり、業績が著しく下降トレンドに入るといった事を株価に織り込める段階ではないと考えています。

株式分割をして個人投資家も買いやすい株になりましたし、予想配当利回りも3%台に入るまで株価は下落してきていますので、投資妙味は増しているように思います。

この記事は11月14日時点で公開されている情報を基に作成しています。

投資は慎重に自己責任でお願いします。