マンチェスターユナイテッドの経営と業績、株価を徹底分析!グレイザー家は本当にだめなのか?

今回はサッカーファンと投資家におすすめの記事です。

一部メディアで買収報道が出ているマンチェスターユナイテッドの経営と業績について分析します。

またマンチェスターユナイテッドの大株主であるグレーザー家の経営はサッカーファンから不評ですが、投資家目線で批判の正当性についても分析します。

 

マンチェスターユナイテッドの業績

業績推移

 

同社開示資料を基に作成

マンチェスターユナイテッドの売上規模は近年、6億ポンド程度で推移しています。20年度と21年度の減収は入場料収入の激減によるものです。

参考:6億英ポンド=960億円(1英ポンド160円で計算)

 

同社開示資料を基に作成

マンチェスターユナイテッドの売り上げの内訳は半分程度が、スポンサー収入やグッズ、ライセンス収入などで構成されている商業収入となっています。

 

同社開示資料を基に作成

商業収入の内訳は22年度で約6割がスポンサー収入で約4割がリテール、グッズ、ライセンス等の収入となっています。

 

マンチェスターユナイテッドの損益は20年度から赤字が続いていますが、主な要因は入場料収入の激減と販管費の増加です。販管費の内訳の推移は以下の通りです。

同社開示資料を基に作成

利益の変動要因はチームの強化費

赤字が続いている20年度から人件費の増加しているのがわかります。この人件費の大半は選手などへのサラリーと考えられます。

次に大きい費用は償却費です。

選手などの獲得は無形資産の取得となるため、直ちに全額がその期の費用として計上されるわけではなく、契約期間にわたって償却されていきます。

逆に選手を売却した場合、無形資産売却益として営業利益に反映されます。

マンチェスターユナイテッドの費用の大半はトップチームの強化によるものであることがわかります。

 

【参考】

勘定科目の原文

放映権収入=Broadcasting revenue

入場料収入等=Matchday revenu

商業収入=Commercial revenu

スポンサー収入=Sponsorship revenue

リテール、グッズ等=Retail.merchandising.apparel&products licensing revenue

人件費=Employee benefit expense

減価償却費と減損=Depreciation and impairment

償却費=Amortization

無形資産売却益=Profit on disposal of intangible assets

 

キャッシュフローはプラス

 (単位

:千GBP)

営業

キャッシュフロー

投資キャッシュフロー

財務

キャッシュフロー

現金同等物
FY2021 113,083 -99,373 47,641 110,658
FY2022 96,371 -93,431 5,040 121,223

 

マンチェスターユナイテッドの損益だけを見れば、チームの強化費が重く利益を圧迫していますが、営業キャッシュフローは1億ポンド程度のプラスとなっており、稼ぐ力は流石です。

キャッシュフローもプラスで損益は赤字でも、安心感のある内容です。

 

財務状態を分析

資産状況

22年度末のマンチェスターユナイテッドの固定資産は10億英ポンド程度あります。

内訳は選手など無形資産が7.4億英ポンド程度と大半を占めており、残りのほとんどは保有している施設などが占めています。

流動資産は2.4億英ポンド程度あり、その約半分は現金と現金同等物が占めています。残りは売上債権などが占めています。

 

負債状況

固定負債は約6.7億英ポンドがあります。内訳は借入が訳5.3億英ポンドで大半を占めています。

流動負債は約5億英ポンドで、内1億英ポンドが借入で、残りは契約負債などが占めています。

借入は固定と流動を合わせると、約6.3億英ポンドです。

 

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ファンが批判している借金の多さは不適切なのか

マンチェスターユナイテッドのファンは、借入金でレバレッジを利かした経営に対して批判的な人が多いようです。

確かに22年度期末の自己資本比率は10%程度となっており、比較的低水準です。

ただ、前述したとおり営業キャッシュフローは大幅にプラスなうえに、マンチェスターユナイテッドが保有する、簿外の知的財産権を考えると、財務が不健全とはいえないでしょう。

選手の移籍市場での競争激化や人件費が高騰している中、内部金融だけでマネジメントするのは、資本効率が悪くなり、資本市場での競争力を失ってしまうため、経済合理性を欠いています。

出来るだけ小さな資本でリターンを出すというのが、現代の市場で評価される経営ですから、基本的に無借金経営を求めるのは間違いです。

 

株価と売却動向

マンチェスターユナイテッドはニューヨーク証券取引所に上場しており、株主はグレーザー家だけでなく、世界中に少数株主がいます。

TradingView提供のチャート

 

株価は11月末から急騰しています。

これはグレーザー家がマンチェスターユナイテッド株を売却する可能性についての報道が出たためです。

23年1月6日時点の時価総額は38億米ドル(1ドル約130円計算で5,000億程度)となっています。

株価はプレミアムが付いた形でのTOBを既にかなり織り込んでいると考えられるため、何の取引も行われなかったり、条件が市場の期待に届かなかった場合は、暴落する可能性もあります。

マンチェスターユナイテッドの買収に興味を持つ投資家は、世界中にいると考えられ、動向には注目です。